烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2
「ということは」
「祖母を刺し殺したとはとても言えませんでした」
「そうですか・・・そうですよね」

「考えてみれば、孫二人がこうしてこの石畳を
歩いているというのも不思議ですね」

二人はゆっくりと双橋の方角へ向かっていた。背が
高く優しい顔立ちの孔明は落着いた声で語り続ける。

「静江さんのおじいさんと私の祖母との出会いは、
ほんとに最悪の出会いでした」
静江は黙ってうなづく。

「しかし悪いのはあの時代。戦争というものが我々
人民と日本人民、共に被害者にしたのです。悪い

のは時の指導者とその思想であって、人民同士は
全く悪くありません」

静江は、私にはとてもそう割り切れないわ、
と思いつつも黙ってうなづいていた
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