烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2

償い

日記はここで終わっていた。
頁をめくると今度はひらがなで、最近のものだ。

「その時からずっと、このまぶたに焼きついた瞳と
この写真を持ち続けてきた。免罪符のように。
もうすぐ私は死ぬ。静江は一人娘を事故で亡くして

落ち込んで、離婚して、今一人で中国を旅してると
お母さんに聞いた。苦しい旅だったろう。何とか
立ち直って欲しい。静江が立ち直れたら、是非この

写真と首飾りを烏鎮の双橋から川の中に捨てて来て
くれまいか。心残りはそれだけだ。そしてこれが
私にできる唯一の償いなのだと思う」
階下で母の声がした。
「静江、ごはんよ!」
静江は笑みながらも思いつめた眼差しでテーブルに着く。

「で、なんて書いてあったの?」
「うん、とても一言では言えない。私又明日中国へ旅立
つからお父さんにそう言っといて」
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