短編小説集
俺はこの春に知ったことがある。
たとえ、織姫とセットじゃなくても名前と誕生日を知られた時点でどこにいても突っ込まれる名前である、ということを。

念願叶って入った高校、藤宮学園でも俺の名前はかっこうの的だった。

しかし、それも束の間。

ネタにはなる名前だが、うちの高校にはもっとゴージャスな名前であったり、あまり聞かないような麗しい名前の人間が多数いた。

今では小学校中学校で呼ばれてたように“ほっしー”というあだ名で呼ばれるか、苗字そのままに“九頭竜”と呼ばれている。

それにしても、あだ名っていうのは、ところ変わってもあまりつけ方が変わらないもんだな……と思う。

“ほっしー”とは、かなり安易につけられたあだ名だ。
小学1年生の時、クラスに「内田」っていう同級生がいた。
こいつがみんなに“うっちー”と呼ばれていたこともあり、その流れで“ほっしー”になった。

俺の苗字はさらっとあだ名が出てくるようなものではない。
はっきり言って"クズ"と呼ばれなかっただけでも喜ばなくてはいけないかもしれない。

このクラスでは、ほかにも“みっちー”や“タッキー”がいたし、「根岸」という友人は“ネッシー”と呼ばれていた。

本人がよしとしているのだからいいのだろう。
けど、俺はずっとどうかと思っていた。

この年、小学校に新たに仲間入りした動物、孔雀につけられた名前は“クッキー”。

本当、名前とかあだ名って安易につけられるものなんだな、って悟った瞬間。
< 10 / 21 >

この作品をシェア

pagetop