短編小説集
どうせ当たらない。そう思って発射した。

コルク弾は音をたてずに命中する。
直後――落下した景品が、ポテ、と音をたてた。

「せーちゃん、取れた!! 取れたっ!! やったーーー!! うさちゃんキーホルダー取れたー!!」

下駄でカンカン飛んで喜ぶ。
自分が当てたわけでもないのに。

「ほっしー、腕をあげたなー!!」

田川のおじさんがキーホルダーを織姫に渡しながら言う。

「いえ、まぐれです」

キッパリと言い放ってその場を離れた。



キーホルダーを嬉しそうに見ながら歩く織姫を見つつ、

「それ、あげるって言ったっけ?」
「えっ!? くれないのっ!?」
「どうしよっかな?」
「せーちゃんっ!?」

焦る織姫を見て、ニヤニヤとしつつ悦る。

「あのね、忠告。せーちゃん高校生だよね?」
「そうだけど?」
「高校生がピンクのうさちゃんキーホルダー持ってたら変だと思う」

頬を膨らませ、実にもっともらしいことを言われた。
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