短編小説集
「でも、別に俺が持たなくてもほかの女子にあげるっていう手もあるわけで……」
「えっ!? それはダメっ! 私にくれなきゃだめっ!!」

慌てる様が必死でおかしい。
でも、私にくれなきゃダメ、と言ってるあたりがこいつらしい。

「あ……でも、もしかして――せーちゃん、彼女……できた?」

訊かれてドキっとする。

「い、ない。そんなのいるわけないだろ」

(俺が好きなのはお前なのに……)

「良かったー!! じゃ、これ、私がもらっていいよね?」

疑問符はついてるけど、もう自分のものと言わんばかりに歩き出していた。

(こんな状態、いつまで続くんだか……)



次は金魚すくい。

これはふたりとも意外と得意。
でも、飼うのは面倒で、いつもすくうだけすくって持ち帰ることはない。

ほかにやるのはスーパーボールすくいとヨーヨー。
スーパーボールは俺が好きで、ヨーヨーは織姫が好き。
これは取ったものを互いに交換する。

でも、毎年思うんだ。

俺のスーパーボールはしぼむことはない。
けど、ヨーヨーは日が経てばしぼんでしまう。
そして、きっと捨てられるのだろう――。

俺のスーパーボールは毎年溜まっていく一方たというのに……。

まるで、自分の想いが具現化されてる気分だ。
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