短編小説集
ある程度、ものを取り終えると食べ物に走る。

最初は綿菓子、それを食べたらお好み焼き、たこ焼き、リンゴ飴。

絶対に買う順番を間違えてると思う。
毎年忠告するけど、この順番は変わることはない。

俺にとっては、その場で何口かで食べられる分量。
でも、織姫は一口が小さいうえに食べるのが遅い。
なのに、ほかに目移りして食べたがる。

結局、手に持ちきれなくなって、どうやって食べるんだ? って状況の出来上がり。

案の定、今年も同じ状況に陥っていた。

「せーちゃぁん……手が足りない」
「バカ。手が足りないんじゃなくて、お前の考えが足りてないんだ」
「だってぇ……。売り切れちゃうかもしれないじゃん」
「じゃぁ、全部買ったところでそれはお前の胃におさまり切るのか?」

毎年同じ会話。

「それは……でも、食べ切れなかったらせーちゃんが食べてくれるでしょう?」
「俺はお前の残飯処理機じゃない」
「冷たいなぁ……」
「冷たいんじゃなくて、お前が横暴なんだ」
「どうしてー? 私が買ったのに、あげるって言ってるんだよ?」

(その前に、自分の口に運べって言うくせに……)

「たこ焼き! たこ焼き食べたい!!」

右手に持った皿をずい、と目の前に出される。
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