短編小説集
どこか嬉しそうに話すお母さんは、
『その時決めたの。この子の名前をカンナにしよう、って』
いつもよりも早く咲くことがどのくらい珍しいことなのか、プロポーズに相応しい花が何かなんて私は知らない。
ただ、ものすごくびっくりした。
いつも厳しい顔をしているお父さんからは想像ができなくて。
その話を彼、私の結婚相手、水野春(みずのはる)に話したら、
「男はみんなロマンチストだよ」
と、笑って言われた。
「ハルも?」
「もちろん。だから、俺が何かプレゼントしたら裏はないかちゃんと考えてね?」
茶目っ気たっぷりに笑うハルの笑顔がとても好きだと思った夏。
――あれから1年が経つ。
「ハル」
「ん?」
「今日は何日?」
「今日は6月10日。義父さんが義母さんにプロポーズした日で、義母さんが義父さんにプロポーズの返事をした日。さらにはカンナの誕生日で、俺たちが結婚する日!」
「本当? 嘘じゃない?」
「ハルくん嘘付かない!」
『その時決めたの。この子の名前をカンナにしよう、って』
いつもよりも早く咲くことがどのくらい珍しいことなのか、プロポーズに相応しい花が何かなんて私は知らない。
ただ、ものすごくびっくりした。
いつも厳しい顔をしているお父さんからは想像ができなくて。
その話を彼、私の結婚相手、水野春(みずのはる)に話したら、
「男はみんなロマンチストだよ」
と、笑って言われた。
「ハルも?」
「もちろん。だから、俺が何かプレゼントしたら裏はないかちゃんと考えてね?」
茶目っ気たっぷりに笑うハルの笑顔がとても好きだと思った夏。
――あれから1年が経つ。
「ハル」
「ん?」
「今日は何日?」
「今日は6月10日。義父さんが義母さんにプロポーズした日で、義母さんが義父さんにプロポーズの返事をした日。さらにはカンナの誕生日で、俺たちが結婚する日!」
「本当? 嘘じゃない?」
「ハルくん嘘付かない!」