短編小説集
俺、九頭竜星彦(くずりゅうほしひこ)はただいま1個下の幼馴染に片思い中。

そう――今、隣にいるコレが現物。

顔はそれなりにかわいいと思う。
でも、意外と凶暴、そしてわがまま。

何でこんなのに惚れたかな? とは思う。

たぶん、刷り込み現象の類。
物心ついた時からずっと一緒にいるわけで、しかも血なんてつながってないわけで、いつもいつも「せーちゃん、せーちゃん」って後ろついて来られてたらさ、うざったいの通り越して、気付いたら好きになってた。

よくありがちな幼馴染に初恋ってやつ?

若干、親に仕組まれてる感も否めないけど……。

一時は、“年上のお姉さん”っていうのに憧れはしたけど、考えてみたらクラスの女子とか、部活や委員会が一緒の女子を好きになったことはなかった。
きっと、同級生よりもこいつのほうが近くにいすぎたから……だと思う。

でも、距離が近すぎて、どうにもこうにも素直になれない。
顔を合わせば憎まれ口を叩いてしまう。

それもこれも、小学校中学校で名前をもとにからかわれたことが原因。
忘れもしない、「七夕ネーム」とからかわれ続けた9年間。
もはや、からかわれ尽くした、と言っても過言じゃない。

別に苛められてたわけじゃないけど、からかわれるのには十分なネタだったことに間違いはなく……。
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