耳に残るは君の歌声


「京子ちゃん、もう十七やったか?女の子はほんまちょっとの間でも急に変わるなぁ、こんなべっぴんさんなって」

あたしの気持ちを知ってか知らずか、修平さんはそう言ってにっこりと笑う。
あたしは極度の緊張で、そんなことないです、と短く答えることしかできなかった。

「あぁ、そや。旅愁って歌、知っとる?」

「知ってますよ。あたし好きなんです、その歌」

「ほんまに!どうしてもな、続きが思い出されへんくて」

言うと、修平さんは旅愁を頭から歌い始めた。
どうやら、『旅の空の』の続きから歌詞が思い出せないらしい。

「それやったら……わーびしきー、おもーいーにー、ひーとりなーやむー……ですよ」

あたしがその後の一節を歌うと、修平さんは驚いたように目を丸くした。

「驚いた。京子ちゃん歌めっちゃ上手いやん!他には?他にはなんか歌える?」

きらきらと瞳を輝かせなが言う修平さんは、まるで子供のようだった。
大人の男の人なのに、と思うと、少しだけ修平さんが可愛らしく思える。
けれど、ずい、と近寄って来られた事に、あたしは思わずびくりと身体を動かしてしまった。

至近距離で見る修平さんの顔は、余計に整って見えた。

切れ長の眼。
まつ毛が、意外と長い。
唇は……

「……京子ちゃん?」

「あ、え……ええ!言うてもらえれば!歌、好きですから!」

修平さんに名前を呼ばれ、ビクッと身体が跳ねあがり、声が裏返ってしまう。

あたしは、何を考えていたのだろうか。
はしたない……。


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