耳に残るは君の歌声
ふけゆく 秋の夜(よ)
旅の空の
わびしき 想いに
ひとりなやむ
恋しや ふるさと
なつかし父母
夢路に たどるは
里の家路
「ありがとう。京子ちゃんの歌、忘れへん。絶対に」
あたしの歌を聞き終えると、修さんはうっすらと涙を浮かべて、あたしと兄に向かって敬礼をとった。
ずっと拳を握り締めて下を向いていた兄は、修平さんの目をしっかりと見つめて敬礼を返す。
「ありがとうな」
あたしの頭をぽんっと撫でて言う修平さんに、あたしは泣きながら、深く深く、一礼をした。
「どうか、ご無事で……」
翌日、修平さんは朝一番の列車に乗って、行ってしまった。
修平さんの見送りには、行かなかった。
「ふーけゆくー、あーきのよー……」
あたしは、今日も歌う。
南の空を
見上げながら。