回廊館の殺人
「で、河上さんは大丈夫なのか?」

康之がことの成り行きを説明すると、奈良は倒れている河上の脈をとる。

「大丈夫なんですか?」

宮下も近づいてきて心配そうな顔で奈良をみる。

「…」

奈良が無言で首をふる。

「…そんな」

宮下が泣き出しそうな顔で悲痛な声をあげる。

「山下、犯人を追いかけるぞ。」

「あっ、はい!」

奥の扉に向かう奈良を康之が追いかける。

「あの、私はどうすれば?」

宮下が困った顔で奈良に尋ねる。

「宮下さんはこの部屋に誰かきたら、何があったか説明をして!!」

奈良は振り向いてそう言うと、奥の扉を開ける。

康之も後を追って扉をくぐる。

『ピチャッ』

「ん?」

扉をくぐる時、足下のカーペットに水溜まりができているのに気づいて、康之が足を止める。

『…冷たい。
水がこぼれたってより、氷が溶けたみたいな…』

康之がカーペットに手をあてて考えていると。

「おい、山下なにしてんだ?
急げ!」

奈良に呼ばれ、康之は考えを中断して駆け出した。
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