回廊館の殺人
「あ、佐久間先輩。」

康之がいつのまにか入口のところに立っていた長身の男、ミステリーサークル部長の佐久間に頭を下げる。

「山下君に宮下さん、テストお疲れさま。」

「先輩、なんなんですか『書人(かきびと)』って?」

宮下が佐久間に尋ねる。

「えっとね、書人って言うのはうちのサークルの伝統の夏合宿の仕掛人のことだよ。」

『夏合宿!?』

康之と宮下がハモる。
佐久間は相変わらずしれっとした調子で説明を続ける。

「ほら、ミステリーサークルって皆でなんかやるって感じはないでしょ?
そこで、だいぶ前の部長が夏に合宿をすることにしたんだって。
毎年、部員の誰かが仕掛人となって場所と日時を指定して部員に告知をする。
告知をされた部員達は指定された日時にその場所で合宿を行い、仕掛人…つまり書人が起こす殺人事件を解決するんだよ。
ま、早い話がミステリー小説の登場人物になりきろうってこと。」

「面白そう!」

宮下が目を輝かせて歓声をあげる。

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