アカボシの帝國
プロローグ

 シーツの冷たさが、急に現実を教えてくる。
 夢の中の微睡みは、幸せだったはずなのに、目覚めてしまって思い知る現実の残酷さに少し嫌気がさす。
 
 わかっているはずだ。
 頭の中では、とてつもなく冷静な自分が言い聞かせようとしている。
 知っていて、選び取ったはずだ。
 再度、自分と視線が合う。
 この甘くて残酷な、私だけの現実を。


 目覚めたら、あなたがいないベッドのとなり。
 痕跡さえない。
 いや、痕跡さえ残させない。
 あなたが冷酷なのではない。
 私が、弱いだけだ。
< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop