SATAN
とりあえず部屋着に着替えリビングへと下りた。
「ご飯できてるわよ。」
私が遅く帰ってきたことなど無かったかのようなこの母の態度は、決して先程のことを忘れている訳ではない。
私は小さい頃から言いたくないことは曖昧に答えているのを母は知っている。
だからあえてしつこく聞いて、私が答えなかったらもう聞かない。というルールを母がつくったらしい。
「いただきます。」
手をあわせ、そう言うと食を進めた。
今日の夜ご飯は私の好きなものばかりだった。
やっぱりお母さんの料理は美味しいなぁ。
なんて呑気なことを思っていた。
母がどんな思いでこれを作ったのかも知らずに。