SATAN
「あ、待って羽美。」
そう言って私の肩を掴み引き止めた。
「お風呂から上がったら外着に着替えなさい。」
外着?
何処か出かけるのかな。
「わかった。」
何故か母の顔に陰が見えた気がした。
――
―――
ガチャッ
お風呂に向かう途中、仕事から父が帰ってきた。
「ただいま羽美。」
「お帰りー。」
いつも通り疲れて帰る父にはなるべく優しくするように、なんて毎回母から言われている。
…が、
「今からお風呂かい?よし、お父さんも一緒に…「却下。」…。」
誰がこんな父親に優しくするものか。
そう、冷たく言い残すとお風呂へと父を置いて向かった。
今は一人で考える時間がほしい。
朝から放課後まで時間を忘れて考えてた人が言えることではないけど。
だけど考えたい。
まとまらないこの思考が私をイラつかせるから。