SATAN

――
―――

全身を洗い終え浴槽に身を沈める。







ずっと考えてるが全くまとまらない朝からの"不思議な感覚"の理由。





そして校長の言っていた異世界のこと。





不思議な感覚は異世界へ行く予兆とも言っていたっけ。






解らないことだらけだ。






異世界というものが存在するのかすら疑わしいのに、それの予兆なんてのが信じられるわけがない。








それに今日の母のことも気になる。







ちっとも解決できない考えをやめ、静かに天井をみた。





「―――――…か――の」


「だ――ら…―――れ―」






お風呂はリビングと壁一枚を挟んでいるため、リビングからの声がお風呂からでも少々ながら聞こえる。






どうやらお母さん達が何か揉めてるようだった。





「―――…で…――は」





よく聞こえないが、いつも仲良しでラブラブなお母さん達が揉めることは珍しい。






だから、ちょっとした好奇心で聞き耳をたてた。






「だから、まだ羽美をあそこへ行かせるには危険だ!」





「何を言っているのですか!もう羽美はこちらでは無理がある時期に近づいているのですよ!?」





「それは分かっている!だが…」





「私たち二人の魔力でなら羽美一人をあちらの世界へ送ることはたやすいです。貴方ももう覚悟をおきめ下さいませ。」






「…わかった……。」






「私と貴方の娘です。大丈夫ですよ。それに、そろそろ奴に羽美の存在が知れているはずですから。」






「そうだな。これ以上ここにいては危ないな…。私達だけでは羽美を守りきれないかもしれないから。」






「えぇ…。」
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