SATAN
「……」
私の素直な気持ちを問い掛けたが父の口から答えはでない。
父は少し困惑した表情をしていたが、ちらりと母を見て互いに頷きあったと思えば突然、紙に何かを書き出した。
「いいか。この者の名前を決して口に出して言ってはいけない。」
コトリと鉛筆をテーブルへ置き私に、そう告げる。
書き終わった紙を、そっとわたしの前に置いた。
どうやら名前が書いてあるらしい。
そこに書いてあった名は…
"SATAN"
ドクンと胸が不吉になった気がした。
この名前を知っている…?
いや、そんはずはない。
でも…。
一人で名を口にしないよう脳をフル回転させたとき、聞き覚えのある声が頭を過ぎった。
――――私の名は――"SATAN"
何度も何度も頭をその声が過ぎる。
「お、思い出した…。」
おもむろに発した私の言葉に父達は何とも言えぬ表情をした。
そうだ、この人――――
「夢で会った人だわ」
そう言った途端、母の目からは涙だ零れた。