SATAN
何故忘れていたのだろう。
いや、きっとSATANとやらが私の記憶から消したのかもしれない。
魔法とかがあるのなら、きっと可能だろう。
「…もう……、こんなに近付かれていたのか……」
父は悔しそうにし、母はただ涙を流していた。
「…羽美を……あちらに送りましょう…今すぐに。」
涙を拭き、つっかえながら話し出した母に父も渋い顔をしつつも同意をした。
母の顔には悲しみ、悔しさ、怒り、恐怖、焦りが全て隠れていると同時にSATANが刻々と近づいてきていることも表していた。
「奴のことや私達のこと、そして羽美のことを詳しく話してやれずに、すまない…。
話してやりたいが今は時間が無い。
それと…
あっちへ行っても決して羽美が奴の名を口に出してはいけないよ。
もし出したりしたら、奴に羽美の居場所がわかってしまうんだ。
奴は本当に恐ろしい。
命を狙われている訳ではないが、奴の考えていることは、まだ計り知れない。」