SATAN


父と母の顔には焦りが見えるが、その手を下ろそうとしない。




二人の顔を見るからにSATANが来たことを分かっているだろう。





そこで父が目を開けた。





「…羽美、私達の後ろへ来なさい」




私はコクリと頷き二人の後ろへ回った。




父はすでに手を下ろし荒々しく吹く風を険しい顔で見つめていた。



逆に母は私へ向き直り先程よりもすごい力で私へ手を掲げている。




ふと父が背中の私達を守るように身構えた。




まさかお父さんだけでSATANを…?



それはあまりにも危険だということは父の顔からと計り知れない、この風から一目瞭然だ。





この二人が必死に私を助けようとしてくれているのに、何も出来ない自分がもどかしい。





何も出来ないが父を勇気付ける言葉くらいは言えるだろうと思い、口を開いた。







「お父さ『ほう、家族で私を出迎えか?』…え?」






聞き覚えはあるが馴染みのない声、実際にきくとSATANの声だと認識するのに時間がかかった。
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