SATAN
『いつでしたかねぇ…、本当に異世界へ行ったという者がいるらしいんですよ。』
ほぅ、それは会ってみたいな。
だが私はそういう類のものが好きなだけで、異世界の存在をべつに信じている訳ではない。
だからこそ聞いてみたい。
異世界とはどのような所なのか、どのような人がいるのか。
異世界は本当に有るのか、と。
『その異世界へ行った本人いわく、異世界に行くには強力な魔法であちら側から引き寄せられない限り行くのは無理だといいます。』
強力な魔法か……。
それがどれ程のものなのかが分からないが、きっと異世界から自分のいる世界へ引き込めるほどだ。凄い力を使うのだろう。
『不思議な感覚がした時、異世界へ行く予兆だといいます―――』
それ以降の校長の話は耳に届かなかった。
"不思議な感覚"
まさに今の私が朝から感じている感覚がそれだ。
まさかね………。
不思議な感覚なんて、よく有ることだ。
その後、校長の話が終わり生徒が教室へ帰って行くときも羽美の頭はそのことから離れなかった。