なんでも屋 神…最終幕
リビングには聞こえないように言ったつもりが、お袋の地獄耳の前では無駄だったらしい。



俺とお袋の壁を挟んだ会話にも、全く反応を示さない一葉を不審に思い、履いたスニーカーを脱いでリビングへ向かう。



言葉を発する事も、表情を変える術も忘れてしまったかのような一葉の背後から、そっとリビングの中を見る。



朝食の洗い物を済ませたイトさんは、前に掛けた白い割烹着で手を拭きながら、動かない一葉を不思議そうに見つめていた。



お袋も同じように、受話器を片手に動かない一葉を見続けてる。



それに、どうやらスッピンではない模様。



俺が近くに来た事を漸く察したのか、一葉は叫びにも近い声を上げながら、俺の胸に顔を押し付けてきた。
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