なんでも屋 神…最終幕
幾らマコとの思い出に浸ろうとしても、思い出すのは最後に見た切羽詰まった表情と、消え入りそうな助けを求める声だけ…。



俺は悲しみに浸る事も出来ず、轢き逃げ犯を見つけ出す事も出来ない、無力な人間なのだと痛感する。



こんな何も出来ない自分に心底嫌気が差しても、また全てを投げ出して逃げ出す事も出来ない…。



真美の時と今では、肩や背中にのし掛かる責任の重さが違う。



そう感じれるだけでも、あの時よりは大人になったという事だろうか。



花束の山から目を背けるように、道路脇に停めたマジェスティに寄りかかり、風で消えてしまわないように身体を丸めてタバコに火を付ける。



一瞬もその場に留まってくれないタバコの煙は、如何にもその身が軽そうに、潮風に乗って飛んでいく。
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