なんでも屋 神…最終幕
恐縮したマスターからの感謝を背中に受け、夜気に満ちた外をタバコに火を付けて歩き出す。



食道や胃の内壁を焼くようなブランデーが入っていても、酔いは全くと言って良い程無かった。



兄ぃはあの金を取りに来ない。俺には不確かな確信が有った。



不確かな確信…言葉にすれば意味は通らないが、今はそれ以外の言葉は見つからない。



人間だから絶対は無いが、出したものを簡単に引っ込められるような男が相手なら、結果としてこうはならなかったはずだ。



それが拳でも金でも同じ事。黒沢一樹という男はそういう男…だからこそ手強い。



三龍に言おうとした言葉を脳内で復唱する…黒沢一樹は一筋縄でいくような甘い男ではない…。



それがまさか自分に返ってくるとは、夢にも思っていなかったと苦笑いを漏らした。
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