なんでも屋 神…最終幕
黒沢一樹という人間を、一番間近で見てきた俺だからこそ、神堂に言い返す事が出来ずにいた。



和紙のコースターに乗せられたアイスコーヒーは、手付かずのままグラスの周りに汗を掻いている。



神堂の前に置かれた水割りも、あれ以来は手付かずのまま放置されていた。



切っ掛けとタイミング。そして身体の中に僅かでもアルコールを含んで、話しに勢いをつけたかったのだろう。



「鷹臣との約束も有る。儂はお前を見放す事は出来ん。黒沢も神の命までは取らんと思うが、現役を退いた儂に出来る事は、最早たかがしれとる。」



軽めの脅し…言い換えれば忠告。だがその言葉に、黒沢一樹がこの件にどれほど本気なのかが分かった。
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