なんでも屋 神…最終幕
暗闇の中で抗う街灯のように、黒から白へ塗り替えようと藻掻く…。



そうしなければ、とてもじゃないが平静を保てないと思っていた。



何処からか運ばれてきた青い匂い…新緑の匂いが鼻先で戯れて通り過ぎていく。



遠くの方から聞こえてくるカラスの鳴き声。



呼応なのか敵対なのかは分からないが、反応して吠える犬の遠吠え。



普段の日常風景を脳内に描き出し、白く塗り替えた部分に日常の色を垂らしていく。



どれくらいそうしていたのかは分からないが、平静を取り戻せたと思って瞼を開くと、鮮やかな橙は僅かな暗さを含んでいた。



斜めに落ちていく夕日は、急かされているかのように小さな欠片となっている…。



必死に何かを考えている時の時間なんて、そんなものかもしれない。
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