なんでも屋 神…最終幕
[トレイン]の前にマジェスティを停め、彷徨うように歩き出した俺は、メインの方向へと歩いていた。



広場に在るベンチに腰を下ろし、火を付けたタバコを口にくわえたまま、手を背凭れの上に広げて上空を見つめる。



雲一つ無い晴れ渡った空に、俺の吐き出した煙が羊雲のように広がっていく。



事務所に籠もる気分になれなかったのは、心の片隅に有る誤魔化しきれない恐怖心が原因だった。



マコのお袋さんと話している間は、すっかり忘れてしまっていた。



…気を紛らわしていたのは、俺の方かも知れない。



空を見つめている俺の鼻先に、嗅ぎ覚えの有るトリートメントの香りと、汗の混じった匂いが張り付いた。
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