なんでも屋 神…最終幕
最終幕第十六章
荒ぶる気持ちを表しているかのように、エンジンを止めても熱を失わないマジェスティ。



西の空に傾いていく夕日は、迫り来る暗闇に少しでも抗うように、橙から黒へのグラデーションを魅せている。



夕方から吹き始めた微風は、俺の足下に転がる二本の吸い殻を、右に左にと揺らしていた。



口元に有る三本目のタバコ。口の端から煙を吐き出し、指先で灰を落とす。



吐き出した煙が視界を覆い、白む先に人工大理石の黒い外壁を張り付けた、三階建てのビルが見えている。



距離にして凡そ十メートル程。



ビルの前の道路には、エンジンをかけっぱなしのまま停まっている、黒塗りのマジェスタ。
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