なんでも屋 神…最終幕
「行っちまったのかい?」



突然背後から聞こえてきた声に、私は両肩を大きく跳ね上げながら振り返った。



「…お母さん。行ってしまいました。あ、お母さんの金庫からまたお金を持ち出したって…。」



私の声も聞こえていないかのように、小さくなっていく二人の背中を、神君のお母さんは見つめ続けた。



「分かってたから良いんだよ。次に帰ってくる時が楽しみさね。」



そう言って、気丈に笑う神君のお母さん。



少し悲しげだけれど、帰ってくる時を楽しそうにしていようにも見える。



二人の小さくなっていく背中を、運命の指し示したタバコの煙が尾ひれとなって、一筋の糸のように付いていくのをじっと見続けた。





また、神君に会える日を信じて…。





    [なんでも屋 神]完。
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