なんでも屋 神…最終幕
ドロップ型のピアスに溜め込むはずの涙は、今にも零れ出しそうな程、辛うじて瞳の中に収まっている状態。



自分は一人だと塞ぎ込んでしまった時ほど、ふと周りを見渡してみれば、心の通い合った友達や家族に囲まれているもの。



そこに人が居るか居ないか、それを恐れずに周りを見渡す事が出来るか出来ないか、その一歩目が大事なんだ。



千里の現状を例えるなら、まさに今の状態だろう。



地べたに座り込んで、遠い何処かを見上げながら立ち上がろうとしない。



なんでも屋の仕事は、どうなっても良いから立ち上がろうとしている客の手助けをする事だ。



立ち上がろうとしないまま、若い人生に幕を閉ざそうとしていた千里だから、俺は依頼を断った。
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