なんでも屋 神…最終幕
人混みに消えていく千里の華奢な背中を見送り、俺は反対の道を事務所に向かって歩き出す。



小さな銀のピアスが入ったポケットは、その可愛らしいデザインとは裏腹に、千里の思いが籠められている分だけ、ずしりと重く感じる。



暫く歩いていると、柳眉を逆立てている優香を見つけ、嘘を吐いた事に対する謝罪と、千里の言葉とピアスを渡した。



優香は手渡されたピアスを強く握りしめ、瞳の縁に溜まった涙を、必死にピアスの中へ納めようとしている。



「…このピアスが対になってる限り、千里と私はずっと一緒ですよね?」



真っ直ぐ俺の両目を射抜くような優香の眼差しに、俺は柔らかな笑みで答え、ゆっくりと頷いた。
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