子供+大人=恋?の方程式(応用編)
この家は玄関を上がって、すぐに左手に和室の大きな客間がある。
昔からあるこの家には和風独特の客間が多く、昔からの名残で集まるとなると、その部屋でというのが習わしのようになっていた。
その例に倣い、俺は客間の襖を開けた。
「あら~…、圭史くん?
久しぶりね~」
すでにそこには親戚が勢ぞろいしており、俺はみんなの視線を一身に受け、少し身構えてしまった。
身近にいた、あゆの母親である伯母さんがゆっくりと立ち上がった。
「みなさん揃ったみたいだし、お茶でも淹れてくるわね。
圭史くんはコーヒーとお茶、どっちがいい?」
「あ、えっと…、じゃあ、コーヒーで」
にこやかに笑みを浮かべながら言ってくる伯母さんに恐縮しながらも、答える。
すると、今度は向かいの席に座っている伯父さんから、「立ってないで座れよ」と促され、俺は近くの空いた腰を下ろした。
さすがに三年の音沙汰なしの状態だと、すべての話題が俺に集中する。
法事とはいうことだったが、爺さんが亡くなってから、すでに十年以上も経っているわけだから、法事とは名ばかりの集まりのようなものだ。
別に拝むわけでも坊さんが来るわけでもないこの状況に、俺の中では“騙された”感が出てこないわけがない。
おまけに、今日は元々茅乃とデートの約束(半ば強引にだが)だったのだから、こんなことを言ってはなんだが、無駄なこの集まりに来るんじゃなかったと後悔した。
思わず、俺の不機嫌な顔に母さんが気づいて、片手を上げて「悪い」というポーズをとるところを見ると、あの母さんが俺にわざわざ謝ってくるところを見ると、どうやら母さんも、法事だと騙されているようだった。
ここまで来たんだ。
別に今更、『帰る!』とかは言わないけど―――…
「ハァ…」
ため息を吐かずにはいられなかった。