子供+大人=恋?の方程式(応用編)
「―――あゆ…」
圭くんがドアを開け、名前を呼ぶと、あゆさんはパッと顔を上げ目に涙を浮かべながらもうれしそうな顔をする。
だけど、すぐにあたしと目が合うとその表情は消えていった。
それどころか、不満そうな顔をする。
「駅まで送る。今すぐ家に帰れ。でないと、家に着くの遅くなるだろ?」
「えっ!? 泊めてくれないの!?」
「―――なんで、俺がお前を泊めなくちゃいけないんだよ。どうしても、こっちに泊まりたいなら、実家の方に行けよ。話は通してやるから」
「え~~~っ!?」
「それが嫌なら、家に帰れ」
冷たく言い放つ圭くん。
あたしには圭くんの後ろ姿しか見えないけど、口調や雰囲気からは圭くんが一歩も引く気配はない。
それは、あゆさんにもわかるのか、あゆさんは「わかった…」と項垂れながら呟いた。
「茅乃。悪いけど、こいつ駅まで送ってくるから」
「あ、うん。じゃあ、あたしも家に…」
そう思って部屋の外に出ようとしたあたしは、圭くんに肩を押されて部屋へと戻される。
「へ?」
「すぐに帰ってくるから、お前はここで待ってろ」
「はあ?」
「いいか。言っておくが、逃げて家にでも帰ってろ? その後は言わなくても、わかるよな?」
コクコクコクと何度も頷いた後、圭くんは「いい子だ」とあたしの頭を優しく撫でてから部屋のドアを閉めた。
そして、外からカチャリと鍵が閉まる音。
それは、まるであたしが逃げ出さないように、重く固い枷をかけられたような気がした。