追憶の緋月桜
朝から嫌な気がする。
今日が“緋月”だったのだろうか。なら、大人しく部屋にいればよかった。
「緋桜、どうかしたん?」
隣に並んで登校していた、なつが心配そうに此方を見る。
うん、なつが私を探ろうとしていることは垣間見える。
けど、深入りすることなく私から話すのをまっている。
「なんでもないよ」
関わることをやんわりと遠ざければ哀しそうに笑う。
わかってる、けどわからないフリをするんだ。
誰だって、化け物なんかと友達にはなりたくない。
離れていく、と解っているからこそ言えない。何も。
「そっか、」
瞳を伏せて、視線を下げる。
気づいていないフリをして笑う。
ごめんね、
心で謝ることを許して……。