追憶の緋月桜


「………何故、わかった。」

「結界が張ってあるからね。わからなかった?」


嫌悪感を露にしながら嫌味を言う。
わかっているのだろう、この場所の意味を。


「………この神社の巫女か?」


―――巫女

馴れない呼び名。
ここではこんな呼び名で通っていないから。


「えぇ、一応はね。」

「一応?」

「あら、家に纏わる政まで首を突っ込むの?」

「………っ、」

「で、貴方は何しに来たの?」


振り返ると風が拭いて髪を靡かせると同時に桜を散らせる。
そうして私は彼の姿を目にした。

闇色、の髪に銀、の瞳。


あまりにも綺麗な容姿に見入ってしまった。
切なくなる胸に微かに灯る炎には気づかないフリをして。


でも、その色、は。


「鬼、の気配を感じたから。」


鬼、という言葉に内心ビクリとする。
鬼、の気配なんてまだないはずなのに。


「ここ、にいると?」

「いや。そんなんじゃない。」

「なら、なんで。」


貴方はここに来たの。


「確かに、鬼の気配はしたが、桜に惹かれたのだ。」


真っ直ぐに、桜を見る。
真剣に、瞳で桜を動かそうとするくらい。



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