追憶の緋月桜
「私なんかの、術を解けないなんて。」
銀、を携えたあの人は私なんか敵わないくらい強かった。
「それとも、貴方は次代の当主ではないの。」
「…………っ、」
少し、迷ってから彼は口を開き、そして。
「―――兄さん。この人は全部わかってる。」
やっぱり、と思って気配を探る。近すぎてわかりにくかったが、剣を向けられたことはわかった。
そして、その切っ先がいつでも心臓を貫けるということを。
「――弟、が世話になった。」
柔らかい声色で話ながらも他を圧倒する。
じわり、掌に汗が滲むのがわかる。
「失礼、ですよ。」
「すまないな。お前が信用するにたりる者かわからんのだ。」
「こちらとしても、同じです。」
カチャリ、剣のおさめる音がして警戒しながら振り替える。
「………巫女よ、」
何を想ったのか、酷くわけのわからない想いが現れる。
真っ黒や髪で弟よりも強い光を瞳で放つ。
「はい、」
「お前は何故この地にいるのだ。」
「この地に生まれたからですよ。それ以外に何かありますか、」
多分、違う意味を言っているのだろう。でも、私は敢えて言わない。わからないフリ。