追憶の緋月桜
いつも鬼退治に来ていくラフな服を着て、鬼の見廻りにいく。とだけを伝えて宵の待っている場所へいく。
そういえば、彼も私服だった。
同じくらいの年頃ならば、今頃は学校に行っていなければならない。
「宵の、待たせてしまってすまない。」
「いや、たいして待ってはいない。それに宵、でいい。」
「………宵、何のようだ。」
目の前にたつと、彼は私よりも大きくて見上げなければ顔すら見えなかった。
そんなトコロがあのひと、と重なって切なくなる。
「おい、神月の巫女。ここじゃできない話だ。場所を変えるぞ。いいか、」
「宵、私の名は緋桜だ。巫女なんて大層なものじゃない」
「わかった、行くぞ。」
自然に手を握られて不意に胸が高鳴る。
そんなに甘い雰囲気じゃない。寧ろ殺伐とした雰囲気だ。
彼から殺気が見える。
「宵、ドコまでいく気だ。」
「………」
「宵っ!」
恐くなって、踏みとどまる。
彼は、宵は、
知っている――――。
「緋桜、お前は………。」
「………っ、!」
思わず耳を塞ぐ。
聞きたくない、聞きたくない、
まだ、自らが認められてないのに他人が、貴方が、
―――口にしないで。