追憶の緋月桜
「緋月桜の名のもとに――」
月が雲によって遮られた瞬間、
体に激痛が走る。
「!っ、あああぁああっ!」
気が遠くなる、訳がわからなくなって体に自由がきかない。
ふと、体が軽くなり痛みが引いていく。
体中に染み渡る新たな血。
じわり、じわり、と侵食していく。
ひと、じゃ無くなっていくのがわかる。
細胞、が死んでいく。
そして、新しい細胞が息を吹き返すように動いていく。
「さ よ な ら 。」
朦朧とする意識の中で、最後に“私”は私に別れを告げる。
――ばいばい、
――ひと、の私。
―――そうして私はひと、の生を終えた。