追憶の緋月桜
緋の血
――何かが変わった気がした。
「兄さんっ!」
「わかってるっ!ふせろっ!」
勢いよく相手に“チカラ”をぶつける。
夜のおかげで拘束はできた。
ただ、これがきつい。
カチャリ、と目の前の鬼に切っ先を向けて。
「--廻れ、廻れ、壱の型、五月雨。」
雨の刃を降らせて、弱らせる。
鬼はただでは滅することができない。その媒体を外から壊して中の核と呼ばれるものを滅する。
これが一般的な滅し方。
鬼が引き攣った悲鳴を上げて苦しむ。
「黄泉より還りし、輪廻と生れ。」
――嗚呼、今日は何故か。
「滅っ!」
桜が薫る――。
「兄さん…」
夜が心配そうに、そして顔を歪めながらこう言った。
「もう一体、来るよ…。」
わかってる。気づいては、いた。
鬼と対峙する姿を見られてた。