追憶の緋月桜
―――強い力を放ってる訳がない。
今日、最後にあった彼女は微かな力を宿してるだけだった。
なのに、
「宵、」
何で、こんなにも鬼の力を宿してるんだ―――。
「……宵、ごめん。」
困惑する俺を余所に緋桜はしゃがみ俺の腹に手を触れる。
「……っ、!」
痛みに顔が歪む。
彼女はそんな俺を見て何を思ったのか俺の腹に口をつけて血を吸う。
「なっ!」
そして次に自分の手首を噛んで、自らの血を口に含む。
口から零れる血が緋桜の瞳を緋く魅せる。
ゆっくり、と緋桜の顔が近づいてきて。
「………ん、」
――口付けられた。
そしてゆっくりと口に血を流し込まれる。
鉄の味が広がり喉をくだる。
またゆっくりと唇を離す。
緋桜は自分の口から滴る血を拭い俺を見た。
「緋、桜?」
「これで、大丈夫。私の血は特別、だから。」
茫然としているであろう俺に緋桜は2度目のキスをする。触れるだけの。
「夜の、も大丈夫。もうすぐしたら式神が報告にくるから」
そして緋桜は夜に消えていった。俺に火を灯して。