追憶の緋月桜
ふわり、風が舞う。
髪の毛が靡いては桜の香りが薫る。
もう、桜は散ったのにまだ残り香があるって笑っちゃう。
そんなことすら私の心は動かさない。
縁側でぼーっとしてたら、会いたくない気配が神社に近づいてくるのを感じた。
大きく溜め息をついて重たい腰を上げる。
だから銀、は嫌いなの。
ーーー私の心を惑わせるから‥‥‥
強く、強く、惹きつけられるの。
だから、嫌いなの。
あぁ、ほんとに嫌い。
ーーーどうしても、触れたくなるから。
私が石段を降りてくと黒髪が見える。
どうしようかと思ってると、石を蹴っちゃって彼が振り返る。
「緋桜」