追憶の緋月桜


はやく、思い出して。


やだ、思い出さないで。


矛盾する気持ちがぐるぐると私を動けなくする。


ねぇ、貴方は今………私をどう思っているの。


「宵、」

「ん、なんだ。」


私に向けて細められる瞳に胸が熱くなって締め付けられる。
やめて、お願い。これ以上私を惹きつけないで。



―――“緋桜”やめて、記憶を感覚に戻さないで。



ゆっくりと無意識に動く手。



―――触れたい、触れたい、

―――あの、柔らかな黒に、



囚われる意識、
記憶が感覚に伝わって何も考えられなくて、ただ本能に従って動く身体。


「緋桜………?」


宵が私の名前を呼ぶけど抑制になんかならなくて寧ろ―――


甘い罠のように抗えない、





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