追憶の緋月桜
桜散ゆる
――あぁ、また桜の季節が来た。
舞い散る桃色の花弁を見ながらそう、思う。
哀しみ、の記憶が頭を支配するこの季節。
目の前にある御神木を見て溜め息をつく。
「なぁに、御神木の前で溜め息なんかついちゃって。」
フワリ、香る薔薇の甘い香りが鼻孔を擽る。
クスクスと鈴のような声色で笑う。
「“輪廻”何が言いたいの?」
「ふふ、“緋桜”は今も昔も一途すぎだなぁと思っただけよ。」
肩に手を置かれ耳元に鈴のような声色が近づく。
「ねぇ、もうすぐよ。」
からかいを含むような忠告を残して、“輪廻”は消えた。
―――もうすぐ、
一族からも言われ続けた言葉。
最近は1日に何十回と聞く。
ただ、“輪廻”が言うなれば本当に“もうすぐ、”なのだろう。
―――いよいよか。
私は御神木に手を添えてコツン、と頭と御神木を重ねた。