追憶の緋月桜


桜が散る。
貴方と出会った季節が始まる。



哀しい、辛い、



でも。

温かかった――――。


――――――
――――


パシンッ、乾いた音が響いたと思えば後から頬に痛みが走る。


「集中おしっ!この腑抜けが!」

「……申し訳ありません。」


床に手をついて頭を下げる。
そんなことさえ、何も感じない。何も思わない。


「継承の刻が迫っているのですよ?わかっているのですかっ!」

「……心得て、おります。」


頭を下げたまま発する。


「波動が強まってきているのではないの!?自らを律しなさい。そして制御するのです。」

「気を、つけます。白華叔母様。」


―――結局は、この人は“道具”が欲しいだけなんだ。
わかっていた、ことなのに改めて実感させられる。


「赤子のお前を誰が食わせてやってきたと思っているのです。私がいなければお前なんか餓死していたのですよ。」

「えぇ、肝に命じております。白華叔母様。」


―――何も、感じない世界。
私が私でなくとも、何も、変わらないのだろう。





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