追憶の緋月桜
私は“輪廻”の言葉に吹き出す。
「確かに、“輪廻”なら創ることも可能だろうね。でも、私はそんな気はないの、以外とこの地も好きなの。」
「物好きね、まぁいつでも待っているわ。」
“輪廻”は何者をも惑わす笑みを浮かべ、姿を消した。
―――輪廻、とは。
生と死の理。
死を迎え、次に生まれるものが組み込まれる環。
具現化し、ひと、としての姿をしたのが“輪廻”だ。
だから、輪廻と“輪廻”は同じようで違うのだ。
似ているものほど、その存在は遠く感じる。
襖を開け、夜空を見上げる。
「あぁ、また散っている。」
桜が夜空を桃色に染め上げる。仄かな光を落とす月は緋に、染まりかけていた。