追憶の緋月桜

銀色

***



セーラー服に身を包み、神社の階段を下る幼馴染み。



「緋桜。」


名を呼べば、ウチを見つけて笑う神月緋桜。真っ黒な髪を腰まで伸ばして、穏やかに笑う大和美人。

その名の通り、桜が似合うと思うてんよ。


ウチ?ウチは緋桜の幼馴染みの水無瀬南都や。
神社には小さい頃からお世話になってんねん。


ただ、あそこの“一族”と緋桜の叔母様は好かん。
緋桜を道具、として見てる気がすんねん。
緋桜は道具なんかじゃないのに。緋桜はウチの大事な友達やもん。

「なつ、おはよう。」


柔らかな笑みのしたに隠された強い意思と暗い闇にはウチはいつまでたっても触れさせてくれん。
やんわりと遠ざけんねん。緋桜のナカにはウチは入られへん。


「緋桜、おはよう。」


でも、いつかは言ってくれるやんね?そう、信じてるで?
ウチ、じゃなくてもいい。最悪は、ただ、緋桜が心を赦せるひとを見つけてほしいねん、


ウチの願いはそれだけやで、




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