第三ボタンの価値
行事だという効果なのか、それなりに卒業というのは自分にとって大きな意味を持っていた。
今まで地元で生活していた自分、大人と呼ぶにはまだ未熟で、まどろっこしいような気分。
前へ進むにも、少しだけ勇気が必要だ。
教室を出ても、さよならを告げる相手なんていない。
女子にはお世辞的な声をかけられてそれっきり。
式が終わったのにずっといても意味ないだろう。そう思ったのだ。
教室を出ると、あちこちで賑やかな声が聞こえる。
後輩の女の子達がそわそわとしていて、そして先輩を呼び止める光景はまさに青春だなと思う。
恋をして、笑って、泣いて怒って。そんな光景がいいなあって。
地味でしかない私はそういったこととは程遠かった。
しかたないか、と言い聞かせて寂しいまま玄関に到着して気がついた。
学ランを着た長身。
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