第三ボタンの価値
「今帰り?」
そう言ったのは、真っ黒な黒髪に目がややつりあがった同級生であった。
普段は冷たいくせに、なにかと助けてくれる幼なじみ。
どうしてここに?
彼とは学校こそ別であったが、彼のおばあちゃんが私の地元にいることで、長期休みによく彼を見かけていた。
小学生の時こそ、そうやってたまに会うと少しだけ遊んだ。中学生になって再会し、何となくそれから付き合いが続いていた。
きっと、その辺の女子よりも付き合いが長く、信頼していた。
変わったな、と思う。
強かった私が、今では弱くて人が怖い臆病者に。
弱かった彼が、今では強くて立派な青年になったのだから。
「あ」
「なに」
「やっぱり恭弥はもてるねえ。しかも第二ボタンもないってことはまさか、本命に…?」
「何それ。第二ボタンがどうのって」
まさか本気で知らないのか?
そう思うとおかしい。
>>