第三ボタンの価値




ボタンのない学ランは妙だった。

しかしそれだけ「ボタン下さい」という子がいたということだ。別にどうってことはない。恭弥のようにかっこよくて秀才ならいくらでももてるだろうが、私はただの普通の人。
いいや、不細工な女だ。






「よくあるでしょ。好きな人の第二ボタンを貰うっていうやつ」

「へえ。で、紫乃は誰かから貰ったの?」






いきなり何を言い出すのか。

私はローファーを落とした。慌てて拾いつつ、ああどうしようかと悩む。


本当は恭弥から貰おうかなって思ってた、なんて今更言えない。


好きな人から貰う等と言ってしまった私に後悔していた。言ってなかったら、言えたかも知れないのに。


何だかんだ言って、私は彼が好きだった。

いつも助けてくれる、そんな彼が。






「いないよ、そんなの」

「いないの」





私の言葉を繰り返した彼に私は、



「そういうのは、可愛い乙女がやることですよ」



と言ってやった。







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