第三ボタンの価値
投げやりに笑ってみせ、ローファーをはく。玄関を出てしまえば、これっきりな予感がした。
大学も別で、ただの幼なじみから知り合い程度になって、いつしか忘れられてしまうのだろう。暮らすで影のうすい私なんて。
「じゃあ」
「なによ」
「お前のスカーフが欲しいんだけど」
「……何でよ」
こんなもの何に使うのか。
恭弥は妹いたっけか?と記憶を辿っても全く思い当たらない。お兄さんがいることは知っているのだが。
赤いスカーフはセーラーの特徴。この制服は妹も着る予定だから、どうしようかと悩む。
スカーフがないセーラーだなんて。後から買うのならいくらになるだろうか、とそんなことを思う。
冗談?
そう思う私をよそに、恭弥はふざけてなんかいなかった。真剣だった。
別に、いいか。
そう思っておもむろにスカーフをはずして手渡せば、何故か笑った。
君、知ってる?とわざわざ言って私に問わせる。
>>