催涙雨
「───‥海?」
耳元で囁かれて
顔がぼわっと熱くなる。
『あお‥いっ……』
「何ぼやっとしてんの?」
『えぇ?なにって…』
葵の熱視線に思わず
身動ぎしてしまう
「海───‥」
『ちょ‥葵?』
ぐんと接近した距離に
躊躇いがちに声をあげれば
意地悪な葵の声が返ってくる。
「明日は日曜だよ?──向こうで
酔い潰れて帰ってこないよ。」
『あお─────。』
あたしの声は葵の唇に消えた。
甘く降り注ぐ愛に
あたしは、溺れてゆく───。
甘く、甘く、儚い葵が
あたしだけを瞳に閉じこめて。